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(古本で)何冊か買って読んだものの感想その1です。


・小川洋子著「妊娠カレンダー」

妊娠した姉を観察する妹の日記で話が語られていきます。

タイトルからしてハッピーな育児日記とか、命のたいせつさとかの話と思ったらいけません。

ちょっと残酷で怖い話です。小川洋子節全開!

この本はけっこう初期の作品ですが、静か・美しい・秘められた狂気や残酷さという小川さんのスタイルは、もう確立されてるなあという気がしました。
芥川賞を受賞しています。

でも私は実のところ、それほど怖いとは思わなかったです。
むしろ好きな部類。というか、小川さんの書く文が好きだ^^

きれいなのにどことなく狂気が漂う、小川さんの文が好きだ。

学生寮と蜂の巣と手足のない老人とか、夕暮れの給食室と雨のプールなど、いったいどういうふうに組み合わせを、そして物語を考えだすんだろう。

日常に潜む日常ならざるものの気配を感じる小川さんの世界観が、私はとても好きです。



「妊娠カレンダー」の姉の心境は、私にもわかると思うところがありました。

妊婦の気持ちが、ということではなくて、自分の身体が自分の思うようにならないときの不安、ストレスのこと。

妊婦の姉はもともと神経質な人のようですが、妊娠してからそれがもっとひどくなってしまいます。

つわりが始まってからは異常に匂いに敏感になり、食べることに対してものすごい嫌悪感を抱くのです。

私だって本当はおいしく食事がしたい、でも身体中がそれを拒否する、というようなことを、姉は泣きながら訴えるのです。

つわりが終わると食欲の固まりのようになり、夜中に琵琶のシャーベットがどうしても食べたいと言い、夫や妹を困らせたりするのです。

「私のせいじゃない、ニ・ン・シ・ンのせいよ」
と言って。


……その感じが、どことなく関節リウマチになり始めの自分と重なって、私にとってはちょっと他人ごとだと思えなかったのです。

自分の身体が今までとちがうようになってしまい、今まではなんでもなかったささいなことに気を揉んだり、いらいらしたりして、わがままになって不安定になって、自分で自分を持て余しているような……


人間のこういう面を全面的に出した小説って、なかなかないように思います。


私は、「赤ちゃんができた、よかったね、めでたいね」で終わる話よりか、この話の方がずっと本当らしいと思ってしまった。


自分の身体が自分の思う通りにならない。
妊娠でなくても、突然そんなふうになったら、誰しも不安定になると思います。
だから私は、このお話の姉は狂気の沙汰だ、異常だと言って片付けてしまいたくないのです。

人間なんて、ちょっとしたことでも変化する可能性を、誰しも持っていると思うから。
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2010.07.26 | 読書 | Comment:0 | TrackBack:0
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